今までとこれから

3月1日に、卒業論文発表会があった。

4年間の集大成だった。


生物を勉強したいと思い始めたのが小学生高学年の頃だったと思う。小さい頃から山や海によく連れて行ってもらい、「生き物」が常に隣にある生活だった。山では花や虫をかき集め、海ではパンイチで泳いで魚を眺めていた。バッタが口から出した黒い汁を興味本位で舐めたのがトラウマでバッタやキリギリスが苦手になってしまったような、頭の悪いガキンチョであった。やりたいことが決まらない人たちが悩んでいる中、自分のやりたいことは幼い頃から明確で、ただただ生物をやりたいと思って勉強していた。一浪はしたものの、無事に生物学科に入ることができ、ようやく自分のやりたいことが主体で勉強できると思うと最高だった。小中高では、みんなの興味はバラバラで、機械が好きな人もいれば物理が好きな人も、文学が好きな人もいた。興味の対象が多種多様なのは本当にいいことだと思う。そんなバラバラの状態が一気に収縮して、周り全員が生物好きになったのが大学だった。分野は違えど、誰もが生物の魅力に取り憑かれていた。自分では手をつけようとは思わない知識を共有し、議論し、身に付けることで、「ただの生物が好きな人」ではなく、「ある程度の生物学的知識を持った人」になれることが楽しかった。さらに、4回生になると研究室に配属されることになった。野外調査というものに憧れて早数年になるが、ついにそれが現実になった。勉学として、自分の大好きな生物の研究だけをやればいい状態は本当に愉快でたまらない。ダイビングライセンスも取れたことなので、社会人になってもダイビングは趣味として続けていきたい。大学に入学してからは本当にあっという間で、全速力で駆け抜けた気分だった。全てが昨日のことのようだ。歳を取るほど時間が経つのが早く感じるとよく言うが、今でもこんなに早いのに、この先どうなってしまうんだろうと不思議に思う。ついこの間まで一緒にゲラゲラ笑っていた同期でさえも、立派な社会人になろうとしている。かたや大学院に進学しようとしている同期もいる(ちなみに僕は後者)。それぞれの人生の本筋をこれから歩もうとしているんだなと思うと感慨深い。特定の人とは今のままの関係を続けていけたらと願うばかりだ。


と、ここら辺までがザックリまとめた今までの経緯。文脈関係なくつらつらの述べただけで、ただ単純に生物が好きなオッサンが育っていることに変わりはない。しかし、この分野に興味が持てたことは誇らしく思うし、好奇心が尽きない。シワが増えて白髪になって腰が曲がっても、春には花を見たいし、夏には虫を捕まえたい。秋には紅葉の中を歩きたいし、冬には………生物は少ないけどとりあえず何か探したい。あと脂ののった鰤が食べたい。眉間にシワが寄りすぐに怒る頑固なお爺さんではなく、暖かな日差しの下をのんびり歩いて道行く人々にごきげんようと声をかけるようなお爺さんになりたい。フォッフォッフォ的な。イメージを掴み損ねている方は「ダンブルドア」でググって下さい。それっぽいお爺さんが出てきます。


そう言えば、ありがたいことに『卒業論文発表賞』というものをいただいた。ダテハゼとテッポウエビの相利共生についての発表だ。人生で初めての研究で、賞を貰えることは素直に嬉しい。が、この経験を生かしてどうこうとは言いたくない。できるだけサボりたいので怒られてものんびりやっていくつもりでいる。


大学生活はもうすぐ終わり、大学院生活があと2年。やっていけるのかどうか、少し不安な部分もある。根っからのネガティブなので上手くいかない想像しかつかない。周りには元気を振り撒いているが、内面は死ぬほど落ち込んでいるときもある。でかい図体して体は弱いしメソメソしてしまうときもある。でもまぁ人生そんなもんだよなぁって思うし、山あり谷ありそのまんまだなぁって思うし、嫌なこと忘れるために飲み会の予定を入れれば楽しみができるし、今まで何やかんややって来れたんだからこれからもきっと大丈夫だろうと放棄するようにしている。寿司ゲーム映画もあるし、しんどくなったら逃げればいい。逃げ足だけは速いからな。スタコラサッサを見せてやるさ。

 

他の人と自分は全く違うなぁとよく考える。当たり前と思うかも知れないが、本当に違う。そもそも自分てどんなんなんだろうって思うのが嫌い。自分のことを他の人と比べて相対的に判断されることが嫌い。周りの目を気にする生活をずっとしてきた。したくないことでも、あの人がしてるからしないといけないだとか、全く思ってないことを、あの人が言ってるから合わせないといけないだとか。多分怖かったんだと思う。ノリが悪いって思われたり、人と違うって思われるのが。まだ1人で生きられるほど大人でもないし、友達は多い方がいいって思ってたんだろうな。でも、自分を隠して過ごすことはやっぱりしんどいし息が苦しかったから、ある時ふと「やーめた。」ってなった。他人に迷惑をかけないのであれば、自由に生きても問題ないって考えに至った。まだ直ってない箇所もあるけれど、自分という人間の在り方を大事にしようと思えた。個性的で良し。人と変わってて良し。異彩を放ってて良し。吉と出るか凶と出るかは時と場合によるけれど、何じゃコイツって思われてもいいし、あいつはヤバイって思われてもいいし、どっちかと言うとそういう風に思われたいと思うようになった。ノリってほんとにいいことねぇな。と、これは人格形成の話。


あぁ、ようやく暖かくなってきた。微ポカポカだ。もう白い息も出ない。好きな季節がまたやって来ようとしている。休眠が解けて新たな命が芽吹く季節。次はどんな1年になるのだろうか。楽しみだ。


P.S. 僕の卒論も勝手に芽吹いて下さい🌱